結婚1日目―私と彼

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授業の終盤になると男子が入って来た。 「おお、北条か」 「すいません、寝坊しました」 遅刻しているというのに慌てる様子もなく、ゆったりした足取りで自分の席につくその男子生徒。 「なんだ、仕事の都合か?」 「そうなんです。新しいプロダクトの開発をしていまして」 「すごーい。次はどんなの作ってるの!?」 彼の登場で女の子は一気に煌めき、ほどけたようにわいわいとする教室の空気。 「まだ内緒だよ」 『プロダクト』とか『開発』とか。 とても同じ高校生とは思えない大人びた発言に肩をすくめる。 同じように遅刻してきても。 私とは違う、先生の反応。 私とは違う、みんなの反応。 それはそう。 人気者の北条君と、教室すみっこ族の私では。 たまたま同じ日に生まれて、たまたま同じ学校に通って、たまたま同じ教室にいるだけで接点なんかなにもない。 ……なにもなかった、昨日までは。 まだ、誰も知らない。 先生も、クラスメイトも、親友も。 私たちが、昨夜夫婦になったこと。
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