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「伯母さま、お昼は冷蔵庫のオムライスを召し上がってください」
「うん」
リビングのソファで寝転んでいる伯母さまは、韓流ドラマに夢中でこちらに向かない。
「あ、美桜」
「……はい?」
「あのさ〜もうちょっと食費抑えられないの? さすがにエンゲル係数高いって」
「……はい。すみません。努力します」
物価がどんどん上がっていて前みたいに安く買えなくて……それに舞香ちゃんが食材を無駄にしてるから……と言いたかったが、怒られるので黙っておいた。
「庭に雑草生えてきてるからむしっといてね」
「……はい!」
私は2階の自室に戻るとブレザーを羽織る。
紺色のブレザーに、赤いリボン。舞香ちゃんと同じ制服だけど、垢抜けていなくてとても同じには見えないなと自分でも思う。
「行って来ます!」
元気に言っても、私が誰かに見送られることはない。
ひとりでひっそり家を出る。
大丈夫。
行き場のない私をここに置いてくれただけでありがたかった。
施設に入れられたらどうなっていたかな?
自分の部屋もない。
学校も満足に通えない。
ご飯もきっと美味しくない。
ずっとずっと孤独だった。
伯父さまがいなかったら、私はもっと不幸だった。
大丈夫、大丈夫。
あともう少しだから。
もう少しで自由だから……。
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