瑠奈の幸せ

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村からも、手伝いに来た者が多く、田植えは、直ぐに終わり 「秋の収穫が、楽しみだな~」 畦道に座って、おにぎりや、サンドイッチを食べながら 皆は、田圃一面に並んで、風に揺れている稲を見て言う。 「秋の収穫の時も、手伝いに来るからな」「頼むよ」 村の者と、田作は、そう言って笑い合う。 「田作にも、私たち以外の仲間が出来た様で、良かったな」 そんな皆を見て、銀が言う。 瑠奈の畑も、春野菜の収穫を済ませ、畑を耕して、夏野菜の苗を植える。 八丁と九尾は、竹やぶから、細い竹を沢山取って来て キュウリを這わせる、支柱作りに励む。 「キュウリ作りは、虫が付いたり病気になったりして、結構難しいんだよね」 瑠奈がそう言うと「虫除けなら、私がするよ」と、銀が言う。 「そうだった、銀の虫除けで、去年は、蚊にも刺されなかったわね。 なるべく、薬は使いたくないから、今年も頼むわ」「任せろ」と 皆が、せっせと働いているのに、玲音は、枇杷の木の傍に居て 「瑠奈~~もう黄色くなってる枇杷、捥いで良い?」と、聞く。 「良いわよ、採ったら冷蔵庫に入れて置いて」「分かった~」 玲音は、捥いだ枇杷を一つ、むしゃむしゃ食べてから、黄色い物を捥ぐ。 「もう、お昼だわ、皆、ご飯にしよう」瑠奈の言葉で 皆は仕事の手を止め、手を洗いに行く。 昼食に、えんどう豆入りの焼き飯と、ポテトサラダを食べ デザートに、冷えている枇杷を食べる。 「美味しいな~」「でしょ、九尾が、せっせと肥料をやってくれたからね」 「それで、こんなに甘いのか」枇杷の味を知っている、八丁が言う。 「この枇杷も、あんなに沢山じゃ、食べ切れそうに無いな」と、大蛇丸が言う 「そうね、村の皆にも、おすそ分けしたい所だけど 村にも、枇杷の木は、一杯有ったしね」妖怪たちの食べ物として 枇杷の木は、あちこちに植えられていた。 「枇杷のジャムは、出来ないのか?」と、玲音が聞く。 「出来ない事は無いだろうけど、この薄皮を剥くのが、面倒だよね」 瑠奈は、枇杷の種を取り、実の周りを覆っている、膜を剥がしながら言う。 すると「それ位、俺がやるよ」と、大蛇丸が言う。 「じゃ、もっと沢山熟れて来たら、試しに少しだけ作ってみよう」 瑠奈は、まだ枇杷で、ジャムを作った事は無かった。 翌々日、試しに作ってみたが、幾ら煮ても、枇杷は崩れず、形を保っていた。 「やっぱり、ジャムにするより、このままシロップ煮にした方が良いみたい」 瑠奈は、枇杷をシロップ煮にして、シロップごと瓶に詰めた。 その作業をしていると、川治が鮎を持って来て 「何をしているんですか?」と、聞く「枇杷が食べ切れなくて」と、話すと 「それならば、少し頂いても良いですか?私の所には、枇杷の木が無くて 村まで行かないと、食べられないんです」と言う。 そう言う事ならと、瑠奈は、レジ袋を渡し 「いくらでも、持って行って良いわよ」と、言った。 川治は、大喜びで、捥いだ枇杷と、いつものキュウリを貰って帰って行った。 「今晩は、鮎の塩焼きだな」「ああ、酒が旨いぞ」皆は、鮎を見て喜ぶ。 翌日、八丁は、背負い籠を背負って、龍と一緒に山へ行くと、家を出た。 大蛇丸と一緒に、洗濯物を干していた玲音は、目ざとく見つけて 「大蛇丸、後は頼む」と、二人の後を追う。 「あら、大蛇丸、洗濯物、一人で干してくれたの?玲音は?」 「二人の後を追って、山へ行ったよ」「もう~しょうの無い子」 と、言った瑠奈は「大蛇丸、お茶にしよう」と、九尾と銀も呼ぶ。 瑠奈の中では、玲音は、まだ子供なんだな、そう思いながら 大蛇丸は、瑠奈が作った、栗の甘納豆を食べ、旨い煎茶を飲む。 「瑠奈、三日後からは、雨になりそうだな」と、銀が言い 「いよいよ、梅雨入りですか」と、九尾も言う。 「丁度良かったわ、明日、注文していた、さつま芋の苗が届く筈だから」 と、言った瑠奈は「昨夜、思いついたんだけど、サツマイモの苗を 村の子供達にも、植えさせたら、どうかな」と、聞く。 「それは良い、子供達も喜ぶはずだ」と、銀も九尾も賛成し 「子供達には、鬼ごっこと、かくれんぼ位しか、遊びは無いからな~ 玲音が教えた、ボール蹴りも、喜んでいるし、サツマイモ植えも 良い遊びになると思うよ」と、大蛇丸も言う。 「それでね、秋になったら、自分達が植えた芋を掘らせるの、どう?」 「良いね~」「ああ、ついでに焼き芋にしてやれば」「もっと良い」 三人は、大賛成だった。 「だけど、人里離れた瑠奈の所だと言っても、村から出してくれるかな~」 人の事を、良く知らない子供達は、村からは出さない決まりだった。 「それは、私が説得するよ」と、銀が請け負う。 「まぁ、銀様が言うなら、皆も納得してくれるだろう」「そうだね」 そう言っていると、八丁たちが帰って来た。 「あら、もう帰って来たの?」「瑠奈、これを見てくれ」 八丁が、背負い籠の中を見せる「まぁ、梅じゃ無い」青い梅の他に もう熟して、赤や黄色になっている、梅が、ぎっしり入っていた。 「山に、梅の木が有ったのを思い出してな、行ってみたんだ。 もう少し遅かったら、駄目になる所だった」八丁は、嬉しそうな顔で言う。 「凄い、よく思い出したわね、八丁、大手柄だよ」瑠奈は、八丁を褒めると 直ぐに、物置に飛んで行って、大きな樽を持ち出し、大蛇丸に洗わせる。 「私も行ったから、これだけ採れたんだよ」と、玲音は自慢していた。 その玲音や、皆にも手伝って貰って、梅干しにする分、梅酒にする分 梅シロップにする分と、選り分け、車を飛ばしてスーパーへ行き 梅酒にする、焼酎と氷砂糖と、その容器と、梅干し用の塩を買って来る。 「また、瑠奈を、忙しくさせちゃったな」八丁は、申し訳ないと言う顔になる 「何を言ってるの、こんな楽しい事、どんどんやらなくっちゃ」
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