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「陽ちゃんはね、気にしないだろうけど、私が気にするの」「何で?」
「うんと仲良くなって、結婚って事になったら、子供が出来るじゃない。
その子は、私みたいに、暗闇でも目が見えて、虐められたり
闇に染まっている人が見える怖さに震えたり
人と違うと悩んだりして、苦しむ事になるわ。
そんな苦しみは、私だけで良いの、子供にまで、させたくないのよ」
「、、、、」皆は、黙ってしまう、瑠奈が、今までに抱えて来た苦しみは
想像以上だったからだ。
「それにね、陽ちゃんが、今まで私の傍に居てくれたのは
そんな、苦しさを抱えているのを、知っていたからよ、でも、今じゃ
そんな苦しみは、どこにも無いし、毎日幸せに暮らしている。
だから、もう陽ちゃんは、私の傍に居る必要は無いの」
「瑠奈、、」銀は、そう言う瑠奈を、しっかりと抱きしめた。
銀の胸で、瑠奈は、少しだけ泣いて、直ぐに元気な顔を上げ
「皆、今夜は何が食べたい?」と、聞く。
「唐揚げ!!」と、大蛇丸が真っ先に言い「炊き込みご飯!!」と、龍が言う
「茶碗蒸し」八丁が、ぼそっと言い「お赤飯!!」と、玲音が言う。
「何で、お赤飯なんだよ」と、九尾が聞くと
「だって、これからも、ずっと瑠奈と一緒に住む、お祝いなんだから」
「なるほど」「確かに」と、皆も、お赤飯に賛成する。
「分かった、じゃ、お赤飯と唐揚げと、茶わん蒸しにするわ」
「やった~っ」夕食を楽しみに、皆は、それぞれの仕事に精出す。
瑠奈は、今年も沢山採れた、無花果のジャム作りに励む。
やがて、秋は進み、コスモスが満開になって、月見を迎えた。
庭に、八丁が作った長テーブルを置き、その上に
ススキや女郎花や、萩の花を活けた花瓶を置き
月見団子や、果物を供え、出て来る、中秋の月を待つ。
「あ、そろそろだぞ」玲音が、明るくなった山の上を指さす。
月が顔を出し、徐々に真ん丸な姿を見せる。
「今年は、スーパームーンと呼ばれる、大きな月らしいな」
その月を見ながら、龍が言う。
「本当だ、真ん丸で、すっごく大きい」玲音がそう言った時
その大きな月は、眩しい光を纏った、と思った瞬間、その光は
一条の矢のように、瑠奈を目がけて走り、瑠奈の体を包んだ。
「わぁ~っ」皆は、あまりの眩しさに、目を瞑る。
その光は、全て瑠奈の体の中に、吸い込まれる様に消えた。
「な、何だったんだ?」やっと、目を開けられた皆が言う。
「何か、成人おめでとうって、聞こえた」
と、瑠奈も、信じられない顔で言う。
「成人?」「そう言えば、明日は、私の誕生日だわ」
「あの光は、月からの、お祝いだったのか?」
「月人は、まだ月に居るのか?」皆は、口々に聞く。
「分らないわ、でも、とっても暖かく感じた」と、瑠奈は空を見る。
皆も、見上げた空には、美しい月が、何事も無かった様に、静かに輝いていた
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