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アーモン様に会って確かめなくては、とは言い訳だ。元気に過ごしているから心配ないなんて、絶対に嘘だ。きっとこれも言い訳。そうよ、私が傍にいて差し上げなければ。
しかし、本当は、多分、手紙を口実に会いに行きたくなっただけ。
だから、いても立ってもいられなくなった。
旅行鞄に入れられるだけのお洋服と髪飾り、靴を突っ込んで、ポシェットには手紙と、こちらも持てるだけの金貨や銀貨、銅貨を突っ込んだ。クローゼットの中に残したドレスには後ろ髪を引かれてしまうが、どうしようもない。
リディアス紙幣は船着き場で使う分で十分だ。
大丈夫。だって、船に乗ったあとは、列車に乗って、ディアトーラの隣にあるエリツェリまで行って、そのあとは馬車に乗れば良いだけだもの。
マリアンヌの胸は、大きく期待に満ちていて、希望がどんどん膨らむようだった。
雨が多いということは、大きめの帽子を被っていった方がいいかもしれないわね。
あ、途中でお腹が減るかもしれないから、お菓子も必要だわ。何があったかしら。
マリアンヌは菓子鉢をのぞき込み、キャンディとクッキーをそれぞれ紙に包んだ。
「あら、マリアンヌ様。お出かけでございますか?」
「えぇ、急ぎ用ができましたので、出掛けて参ります」
声を掛けられて、ふと現実に戻った。お抱え執事のジョナサンだった。あぁ、まだここは屋敷の中なのね。
「どちらへ?」
「お父様とお母様には伝えてありますので、気になさらないで」
「左様でしたか。お気を付けて」
ジョナサンが深々とお辞儀をして、マリアンヌを見送った。
しかし、マリアンヌの胸はドキドキと鼓動している。上手くやったわ。
そうよ、伝わってはいないけれど、伝わるようにしてきたもの。ちゃんと手紙を置いてきたもの。嘘はついていないわ。
そう思いながら、マリアンヌは大きく息を吸い、屋敷の外へ飛び出した。
雨が降らないことを晴天に祈った。
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