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社交パーティー
1週間後。社交シーズンがやってきた。僕達は結婚式を挙げる予定が無かったため、様々なパーティーに顔を出して、婚約の報告をして回っていた。
「本当に結婚式はしないつもりなの?」
お互いの両親に質問されたが、ふたりとも仕事が忙しすぎて、そんな時間は無かった。1年か2年後に出来たらいいなとは思うが、その頃どんな状況か分からないので、安易に何かを言うことは出来なかった。
今日は王家主催のパーティーだった為、国王陛下夫妻と王弟殿下に挨拶を済ませると、そのまま帰ろうとして何もないところで転びそうになっていた。寝不足の状態で3日間連続のパーティーは流石にキツイ。
「おっと‥‥‥。アレク、大丈夫?」
すっと差し出された腕に支えられた僕は、赤くなりながら宰相閣下の腕の中で悶えていた。今日、待ち合わせ場所で会った時に耳元で「アレクって呼んでいい?」と聞かれて、頷くことしか出来なかった僕だったが、アレクと呼ばれるたび、地上から10㎝上を歩いているような気分だった。
「だいじょぶでふ」
「大丈夫です」と言おうとして、舌を噛んでしまった僕は、再び赤くなりながら俯いていた。宰相閣下は、僕の頭を撫でると「ちょっと待っててね」と言って、パーティー会場へと消えて行った。再び戻ってきた時、彼の手には鍵が握られていた。
「国王陛下に城の客室を貸してもらったんだ。少し休んでから帰ろう。私もパーティー続きでバテてしまったよ」
僕はそこまで具合が悪かった訳では無かったが、ひとまず休むことにした。宰相閣下に肩を貸してもらい、用意してもらった客室へと一緒に向かった。
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