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もうそんなの気のせいよ。わたしはきっとまだ麻酔が効いてるんだわ。こんな夢のようなことがあるはずないもの。
シャロンは彼の優しさがまんざらでもなかった。いや、むしろうれしかった。傷は痛いし、目は良く見えないし、仕事のことだって不安だった。これで仕事を休んだらせっかくのチャンスが台無しになるかもしれない。
不安がこんな気持ちにさせるのよ。
ああ…でも彼に甘えたい。あのたくましい腕に抱かれて温かい胸の中に顔をうずめられたら…そして彼がキスをしてくれたら…
「シャロン、眼鏡がいる?」
「ええ、そうね」そうよ。眼鏡さえあればわたしは現実に戻ることが出来るはずよ!
シャロンはジェリーから眼鏡を受け取るとそれをかけた。
目の前にジェリーの顔があった。唇すれすれに心配そうな彼の顔が見えた。
シャロンは驚いて顔をそむけた。
「何よ。離れてよ!」
「ああ、君が無事でよかったよ」彼はそう言うとそっと頬にキスをした。
唇が触れたところが熱を持ってその熱が水面にインクを垂らすように体中に広がっていく。わたしの頬は小さな子供みたいに赤くなった。
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