シャロンは気づいていなかった最低なジェリーが最高のジェリーフィッシュだったことに

64/73
前へ
/73ページ
次へ
 「さあ、シャロン今日は君の好きなサーモンだね。はい、口を開けて…」彼はこの1週間の間に食べさせるのがずいぶんうまくなっていた。  大きさもちょうどいい加減にして、上手に口元に運んでくれる。  シャロンは黙って口を開けるとサーモンをくわえた。そして舌で少したれたソースを舐めとろうとした時、彼がソースを指でなぞって取ってくれた。  「ありがとう…」シャロンはため息をついた。背筋がぞくぞくして腿の間が熱くなる。  「いいんだ。僕がソースをつけすぎたから」ジェリーはそう言うと唇を噛みしめた。  ふたりの間には、一気にもどかしいほど熱い空気が横たわった。静電気にでも触れたみたいに、びりびりした感覚が指先を這いあがる。  シャロンはやっとの思いで、食事を終えるとジェリーが食器を片付けに行って帰って来た。  今よ。今しかないのよ。シャロンはベッドに座ったままだった。ジェリーが椅子に腰かけると彼女はジェリーの顔を見た。  黒いまつ毛に縁どられた瞳はプラチナのように輝き、真っ白い歯を見せて微笑んでいる。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加