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N中学から公立の進学校へ進みたい者の大半は、学区内のH高校に進学した。
中3当時の担任教師は、僕の学力はH高に進めるほどではないが、M高理数科には受かると踏んだようだった。
ただ、受験先決定の進路指導の際、担任教師はこう言い足した。
「あのM高の校長は、僕の恩師でね」
この時は聞き流したが、つまりは担任教師のエゴだった。自分の恩師に当たる校長のいるM高に、自分の教え子を送り込んで、それを満たそうとしたのだ。
それに気づかないほど、僕は自分を知る者が少ない新しい環境には心奪われていた。
いじめからの逃避を始めとする、僕に憑いて離れない強いリセット願望がその理由の最たるものだった。
かくして小中学校から面識のある人間のほとんどがいないその新天地で、腰が引けるような思いをしながらも、希望も持って十代の後半というかけがえのない時期を過ごそうとした。
そうした中でも思い続けていたそのヨッコのことが、さらに僕の背中を押した。
それが、サッカー部入部だった。
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