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まだ覚えている。
あれは、部活帰りだった。
その日は平日で、梅雨らしい重たい空が暗く冷たい雨を降らせていた。
部活は屋内での筋トレだけをこなして短時間で終わった。
陽が落ちる前の帰宅となり、僕は地元に向かう列車に揺られた。
途中のK駅のホームに、トシキが立っているのが見えた。中学卒業後、初めて見たが、僕と同じ列車に乗り込んでくるらしい。
トシキは中3の時の同級生だったが、不良で学校にはほとんど来なかった。
たまに学校に来た時に授業中、そばまで来た教師が彼に笑いかけるようにした直後、いきなり自分が座っていた椅子を持ち上げ、教室の窓に投げつけガラスを割って粉々にしたのを僕は覚えていた。
彼は長身で、髪は肩にかかるくらいの長さだった。整髪料なんかでトップに向けて逆立てるようにしていた。
そして、いつでもどこでもポケットに両手を入れて歩く、どことなくキザな男子生徒だった。
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