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体育の授業でサッカーのときに、僕が周りに対して派手にプレーしているのが、そのトシキの気に障ったのか、彼はボールをキープすると僕に近づいてきて挑発してきた。
「おい、サカシタ! オレからボールが奪えるか? 勝負しろ!」
僕は彼の売り言葉に乗って、彼の懐に入るようにして足を伸ばしたが、彼はいわばスポーツ万能だった。一瞬で僕をドリブルで抜き去った。
僕は皆の前で馬鹿にされた気がして、それ以来トシキに対して、あまりいい印象はなかった。
それで再び列車が走り始めたとき、同じ車内にいることを思うと、平静でいられず不快でならなかった。
やがてN駅に到着すると、僕は列車を降りるなり脇目も振らず、一心に早足で改札口に向かった。
改札をくぐって、僕は目を疑った。
ヨッコがいた。
3か月ぶりに見るヨッコは、すっかり別人のように髪が伸びていた。薄く開いた口元も濡れて見える。
僕は、こんなに早くまた会えると思っていなかったので、何て声を掛けたらいいものか分からず、言葉に詰まってしまった。
彼女の前で立ち止まって、どぎまぎしつつ、僕はとりあえず彼女の名前を口にした。それだけで自分の顔が赤くなるのを感じる。
思わず、頭を掻く。
するとヨッコは、目を瞬かせて顔いっぱいに笑みを浮かべた。
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