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ヨッコは、中学3年になってから初めて同じクラスになった女子生徒だった。
僕より少し背が高く、ハンドボール部だったせいもあり、やや筋肉質のがっちり体型で、髪はショートカットで、肌は小麦色をしていた。外見だけで言ったら、初恋の人・チハルとほぼ正反対だった。
彼女とは一緒の班になったこともないし、同じ係になったこともなく、それどころか、まるで口を聞いたこともなかったのに、彼女の方では僕のことがだんだん意識に上がってきていたらしい。
秋も終わりに近づいたころ、美術もしくは理科の授業の後の教室移動のときだった。
階段を下りるとき、僕の後ろをヨッコとその友人キミヨが歩いていた。
そのとき、キミヨと会話をしていたはずのヨッコが突然言い出した。
「わたしな、サカシタ君のこと、好きやわあ」
まさに青天の霹靂。
突然自分の名前が出ただけではなく、好きとまで口にされて、すっかり僕は反応に困ってしまった。
しかも僕に話し掛ける風でもなく会話の一部として聞こえてきたそれが愛の告白と受け止めるのも、僕にとっては他人の会話を盗み聞きしていたふうに取られては苦しいので、結局聞こえないふりして歩き続けた。
それに、不良グループと仲良くしているヨッコは、僕の目にはあまり品がないように映ってもいたので、女性として見ることはなかっただけに、その好意を受け入れるのは躊躇した。
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