赤と黒のロマンティスト

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『そりゃあ優香はファン歴が長い女だから、残念だけど『そう言う事』になっちゃうよ恵』 「えっ?じゃあ私はシケモク屋敷の優香さんに負けているの? そんなのダメだよアベル、だって彼女は彰さんや桐生店長を裏切って カーネリアンホールに38個の盗聴器を付けたメンヘラ系の危ない信者で、 しかも何を考えているのかサッパリわからないパンプキンヘッドなんだから!」 『そうだね恵、確かにあの女は物凄く危険なタイプの信者だから 出来る事なら今すぐ恵にやっつけてもらいたいよ全く……』 「もちろん私はそのつもりだよ?でも私はオブシディアンの事を何も知らないから、 今すぐ私が優香さんをやっつける為には、とにかくオブシディアンの歌をガンガン聞いて、 そして彰さんの歌に影響を受けた彼女がドコの山荘にルビーを隠したのかを考察した後で、 クルクル若頭が彰さんのルビーを犬神様に献上するのを阻止しなきゃいけないから…… だからアベル、私は何をどうすれば、彰さんの作った曲を全部まとめて聞く事が出来るの?」 と一気に話が進展したので 『ありがとう恵ちゃん。じゃあ晩メシの準備が終わったら リビングに置いてある白いキャビネットの一番下の引き出しを開けてごらん? 薔薇の模様の大きなCDケースの中に、オブシディアンのDVDが沢山入っている筈だから』 「うん、わかった。 じゃあ急いでケーキと晩御飯を作るから、もうちょっと待っててね」 と大急ぎで晩ごはんの準備を済ませた恵はこの後すぐに アベルと二人でリビングルームに移動して、 さっそく白いキャビネットの中からDVDを取り出した後 『じゃあまずはScarlet Romance(スカーレット ロマンス)のDVDを見る事にしようか恵ちゃん。 このアルバムは彰が大学4年生の時にインディースで出したアルバムだけど…… これを出した頃の彰は両親を亡くしたばかりでかなり荒れていたからね…… 彰の黒い心を知りたい気持ちがあるならば、絶対にこれを見ておくべきだと思うよ?』 こうして恵はアベルに勧めてもらった Scarlet Romanceのライヴ映像を見てみる事にしたけれど…… オシャレなDVDを片手に持って、大きなテレビの所に向かう ロック初心者の恵は何故か突然このタイミングで、 (大学4年生の時にご両親を亡くしたって事はつまり、 今から6年位前の出来事だから、絶対に辛かった筈だよね…… 私は子供の頃だったから、両親の事は殆ど覚えていないけど でも半年前にお婆ちゃんを亡くした時は悲しすぎて毎日が放心状態だったからね……) と心の中で無意識に、つらくて悲しい半年前の孤独な日々を思い出していた。
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