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私のほうが浅香を知ってる。私のほうが浅香の心に占める割合が大きい。私のほうが貴女のために誠心誠意生徒会活動を通じて仕えてきた。一緒にお風呂にだって入ったんだぞ。小学二年生の頃にだが。ポット出のオスなんかにどうして浅香をくれてやらなければならないんだ理解できない。それ以前にしたくない。私の目をかいくぐってどういうアプローチをかけたんだ?
「……知りたいのか?」
「は?」
「私の好きな人」
ひと段落ついたのか、浅香はクルクルと回転椅子を回し、私のほうに顔を寄せた。さっきと言っていることが違う、と言う突っ込みすらできない。ドキリと胸が痛むというか比喩抜きで心臓がはねた。三日月に歪められた真っ赤な口元が官能的に私を誘っている。ここで本能的に彼女に襲い掛かったらどれだけ満たされるだろうか? あぁキスしたいなぁと恍惚となりそうなのを全理性を結集し抑制する。
「は、はひ……!」
思わず漏れた変な声に、なんだお前、と苦笑する浅香。顔に熱が集中していくのを感じながら、けれど取り繕おうと必死に咳払いする。あぁ好き好き好き。
「じゃあ、当ててみるがいい」
「え?」
素っ頓狂な声を上げた私。
「あ、当てるとは、副会長の、好きな人、ですか?」
浅香はさらに楽しそうにクルクルと椅子を回転させる。浅香はちょっと、というか、どこか読めないところがある。ただ、何か妙なところで彼女のテンションは上がる。
「暇つぶしにはちょうどいいだろう。君が右往左往するのを観察するの、僕は好きなんだ」
「そ、そうですか! 少々お待ちください!」
本音を言えばやりたくない。どうして私が浅香の好きな人の名前を口ずさまなければならないんだ。不愉快極まりないし殺意すら芽生える鬼畜の所業だ。しかし、もし誰が好きなのかを当てればヤツを浅香から隔離することができる。冷静さを失わず大局を見れば、何とか耐えられる。
やるしかない!
シナプスが大量に分泌され、思考が冴える。できる。私ならできる。私ならあてられる! そして浅香の視界から消えるように取り計らえれる。
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