悪役令嬢は、ただ、ただ、ただ……!愛され、た、かった

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 またベスティアが生まれる日に目覚めた。  だけど私は1年間寝込むことになってしまった。これが反動なのだろう。動けるようになっても支えなしでは動けない。でもいいことはあった。お父様が私を心配して私のそばにいてくれる。母となった女が醜い表情で私を睨むのは爽快だった。  でも、私が普通に動けるようになった10歳。お父様は5歳のベスティアから離れなくなった。このままではまた取られる。嫌だ。愛されないで歩む人生は私じゃない。  だから私は、お父様に剣を習った。 「家族を守れる力を持ちたいの」  その言葉に感動したお父様は、私の元に戻ってきた。剣が大好きなお父様だから、嬉しそうに私に教えてくれた。手が痛くて大変だったけれど、顔に傷を作るよりマシだわ。  たくさん練習した。  ベスティアが1人になる時間も把握した。  私は15歳になった時、美しい黒のドレスを着てベスティアの部屋に訪れた。やっとベスティアを消せると喜びながら布団に剣を突き刺した。間違いなく心臓部分を貫いた感触に酔いしれながら布団をめくると、ベスティアの横に眠る金髪の美しい男性の逞しい胸筋が血で染まっていた。  私は泣き叫んだ。  憧れお慕いしていたウルフ様がベスティアの(とこ)にいたことが信じれなかった。醜い傷を顔にもつ私に微笑みかけてくれた麗しい人を手にかけてしまったことを信じられなかった。  私は家を飛び出した。  すぐに魔術師の所に行った。  薬を求めた。  何度目かと聞かれた。  2度目と答えた。  私は薬を飲んだ。 「3度目だったら手元の薬は飲んではいけないよ」  私は、言葉の意味を飲み込む前に、ウルフ様を刺す前の日に目覚めた。
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