8.幸福

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8.幸福

 キルヴァイスは、目を覚ました。  いつの間にか、ソファで寝ていた。  キルヴァイスの体の上には、ヴァルディシオンが覆いかぶさるように寝ていた。二人とも全裸だった。  キルヴァイスは微笑んだ。目の前に、自分の胸の上で寝息を立てているヴァルディシオンの顔がある。普段の威厳のある姿からは想像も出来ない、安らかな寝顔だった。    幸せ。  それがキルヴァイスの身体の隅々にまで染み渡った。  キルヴァイスは、瞼を閉じた。  いばらの鎖は自分に苦痛を与えていたが、それだけでは無かった。痛みを感じる時、常にヴァルディシオンの意志も感じていた。  お前を離さない、という意志を。    言われるまでも無く、私は、死んでも貴方の傍を離れません。  キルヴァイスは、心の中で、そっと囁いた。  心臓は、縛られてはいなかった。  
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