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「申し訳ございませんが、そういうことですので。また、しばらくはお店を休ませて頂きます」  帰ってください、とばかりに大きくドアを開けた。  けれど、桐ケ谷さんは店を出て行こうとしなかった。 「ご主人が倒れられ、大変なときでしょうが、お店を閉めておかれるのはもったいないと思います」 「はあ?」 「仕入れられた食材が無駄になります」  優子叔母さんはまた怪訝な顔に戻った。が、桐ケ谷さんは気にならないようだ。 「お店を開くべきです」  優子叔母さんは深くため息をついた。 「開きたくても、今、健一さんは料理を作れないのよ。何をおっしゃっておられるのかしら」 「料理は娘さんが作るのです」 「え?」 「このお店の味を見事に継いでらっしゃる娘さんが作るのです」  
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