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大変なことになった。  藍ちゃんはその夜、眠ることができなかった。  桐ケ谷さんはなかなか帰ってくれず、藍ちゃんが作った晩ご飯がどれだけお店の味を再現しているか、優子叔母さんに熱く語った。  挙句、お店を閉めておくのがどんなに勿体ないかを力説する。仕入れのために発注し、キャンセルできない材料はもちろんのこと。店が閉まっていたら、このお店のお客さんがどんなに気落ちするかまで、延々と語った。  キャリアウーマンの優子叔母さんのげんなりした様子に、藍ちゃんは何故桐ケ谷さんを店に入れてしまったのか後悔した。  やがて、優子叔母さんは、 「桐ケ谷さんのご意見はよーく分かりました。ですが、藍はまだ小学生。保護者の健一さんや優子に相談させて頂きます。今日はお引き取りを」  無理やり話を締めくくり、追い出すように桐ケ谷さんを外に誘導した。 「なんでこんなことに」  その夜、泊まってくれた優子叔母さんの小言はやむことはなかった。  布団にはいった後、桐ケ谷さんが言った、「お店を開くべきです」や「料理は娘さんが作るのです」の言葉が浮かんでは消えた。
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