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「佐伯君、ひどい。小豆沢さんは昨日大変だったのに」  最前列の席の久我小春(くがこはる)ちゃんが振り向いて叫んだ。 「うわ、さすが優等生」  佐伯君がはやし立てるのを、みんなが笑う。  小春ちゃんが真っ赤になって前に向き直ったのと同時に、三浦先生がパンパンと両手を叩いた。 「はい、みなさん静かにしてください。授業中です。居眠りは感心しませんが、久我さんが言ってくれたように、小豆沢さんのお父さんが入院されたので、小豆沢さんも疲れているのでしょう。そこは分かってあげて下さい。では、授業に戻ります。佐伯さん、元気があるようですね。続きを読んでください」 「え、俺?!」 「はい、佐伯さんです」  佐伯君は国語の教科書をパラパラめくりながら、 「どこ?」  小声で周りの子に尋ねていた。 「はい、二十三ページ、四行目から」  周りの子が答えるより先に、三浦先生が答えた。クラス中が大爆笑した。
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