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総合病院に着いて、おじさんに連れられ中に入った。患者や付き添いの人でごった返している受付を通り、エレベーターに乗った。
廊下の角をいくつか曲がって、手術中のランプのついた部屋の前にたどり着いた。ピッタリ閉じられたドアの前で、息を詰めて立ち尽くしたら、
「藍。八朔さん」
と、お母さんの声が背後でした。手術室前にある長椅子に気付かず、藍ちゃんたちはドアの前にきたみたいだった。お母さんはその長椅子に青ざめた顔のまま腰かけていた。
お母さんは長椅子から立ち上がって二人に近寄ると、藍ちゃんを連れてきたお礼をおじさんに言って、一礼した。
「かまへん。こんなときに気を遣わんでも。それより、健一は?」
お母さんは静かに手術中のランプを見つめた。
この中にお父さんが──
「脳梗塞やって、ほんまなんか?あいつまだ四十代やで」
おじさんは手術室の前でウロウロとしだした。
どのくらい待っただろうか、手術は無事に終わった。が、後遺症が残る話をお医者さんから、説明された。
お父さんは病室に運ばれた。いつも、お客さん相手に丸い顔を余計にまあるくして、ニコニコ笑顔を絶やさないお父さんなのに。その、はちきれんばかりの丸い桃のようなお父さんの顔は、今はみずみずしさがなくなっていた。酸素マスクがつけられている。
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