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お父さんが麻酔から目をさましたときに、お母さんが声を掛けた。返事らしい声が聞き取れないうちに、お父さんはウトウトしだした。藍ちゃんは声を掛けることも怖くてできなかった。
お母さんと八朔おじさんが何か相談し終え、
「藍、今日はお母さん、このまま付き添うから。藍は八朔おじさんと一旦帰りなさい」
と、藍ちゃんに告げた。
晩ご飯代のお金を藍ちゃんに握らせ、八朔おじさんに「お願いします」と頭を下げた。
そうして、藍ちゃんは家に帰ってきた。帰り道に、
「晩ご飯、おっちゃんとこで食べたらええ」
と、八朔おじさんが言ってくれたけど、藍ちゃんはおじさん家に行く元気がなかった。
「そうか。ほな、なんかあったら遠慮のう連絡するんやで」
おじさんは藍ちゃんに無理強いすることなく、家まで送ってくれた。
「こうやって帰れたんや。健一は大丈夫や」
別れ際のおじさんの言葉だ。藍ちゃんに向って言った言葉なのか、おじさん自身に言い聞かせているのか、おじさんはニコリともしないで帰っていった。
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