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藍ちゃんはブンブンと音が聞こえるような勢いで首を横に振った。急いで調理場に駆け込み、ご飯をお茶碗によそった。
カウンター越しから女の人が手を伸ばして、それを受け取ってくれた。お味噌汁、生姜焼きも受け取ってくれる。
藍ちゃんがさっき座っていた席の隣に腰かけて、女の人が手を合わせた。
藍ちゃんも、調理場からさっきの席に座った。
女の人がお味噌汁に口をつける。
「うわあ。うん、この味」
女の人が頷きながらお味噌汁を食べている。
「すごいね。あなた、ここの娘さん?」
頷く藍ちゃんに、女の人は満面の笑みを見せた。
「私ね、仕事が上手くいってなくて──そんなときにここのお味噌汁頂いて、元気が出たの。だから、ここのお味噌汁が凄く好き。あなたの作ったお味噌汁、さすが娘さんよね。お店の味だわ」
藍ちゃんは、そうかな?と首を傾げながらお味噌汁を飲んでみた。
「ね、ここのお味噌汁、お出汁がかつお節や昆布じゃないわよね。いりこ……でもない……」
「あ、はい。違います。鳥ガラです」
女の人は食べていたものを喉につまらせ、せき込んだ。
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