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「大丈夫ですか?」
藍ちゃんはサッと調理場に戻って、冷蔵庫から出したお水をコップに入れて、女の人に手渡した。
せき込みながら、女の人はお礼を言って水を飲む。
「ああ、びっくりした。あなた、鳥ガラの出汁もとるの?」
藍ちゃんはまたも、力強く首を横に振った。
「鳥ガラの出汁はお父さんがとっていて、今日のお味噌汁も出汁はお父さんがとって凍らせていたのを使って……」
女の人は納得した様子で頷いた。
「そっか、分かったわ。でも、鳥ガラ出汁のお味噌汁って、変わっているわよね」
笑顔になった女の人を見て、安心した藍ちゃんは席に戻った。
「この生姜焼きも柔らかくて美味しい」
「火を通しすぎたらダメだって、お父さんが言ってました」
「火加減ね」
「最後の方は火を消して蓋をして、余熱でするんです」
「焼き方も工夫されているのね。ほんと、ここのお料理はどれも手を尽くされていて、ホッとできる。大好きよ」
お店を褒められ、藍ちゃんはいたたまれなくなった。藍ちゃんはこのお店が嫌いなのだから。
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