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「雨、いつまで降るんやろう」
ぼそりと呟いた声なのに、やけに大きく響いて、小豆沢藍ちゃんはびくりとした。
藍ちゃんは、駅に続くアーケードの一角にある、藍ちゃんのお父さんがやっているお店、「あいちゃん食堂」にいる。
午後七時過ぎ、いつもなら、常連のお客さんでいっぱいになっている店内も、今は小学五年生の藍ちゃんしかいない。店の外の行き交う人がたてる騒がしさや、雨がアーケードの屋根を叩く音とは一切無縁のようだった。
店はこぢんまりとしていた。カウンター席は五人のお客さんが座れる。その他には四人掛けのテーブルが二つだけある小さい食堂だ。今はそこに一人もお客さんはいない。お客さんどころか、お父さんもお母さんもいない。
今日のお昼、まだ学校の授業を受けていた藍ちゃんに事務の人が告げにきたのだ。
「すぐに帰る用意をして。家の人が迎えにきているから」
帰る用意をして校門に行くと、そこで待っていたのはお父さんでもお母さんでもなかった。黒いTシャツにジーンズ姿の人がいた。
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