マナよりのまな

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「幸せ」はどの状態の時からそう言えるようになるのだろうか。告白されたら幸せか?付き合い始めたら幸せか?…結婚できれば幸せか?この問題の答えとして「個人差」という曖昧な表現を使い片付けようとするならきっとそれは考えることを放棄しているに過ぎないのか? 男には悩みがあった。それは自分の結婚生活を幸せに感じることが出来ないことによるものだった。こう書くと「相手がかなりの悪妻だったのだろうか」や「借金に追われ余裕がないのだろうか」など男と妻に何かしらの要因があると考えるのが普通だろう、ただ妻は口調こそはそこそこ強いかもしれないが根は優しい「姉御肌」という言葉が相応しい人でそんな彼女を嫌いだと思ったことは結婚前後で一度もないし、夫婦両方がそこそこ大きな会社で働いているだけあり金の方も困らない程度にはある。幸せを感じる為の理由なら幾らでもあるはずなのだ、しかし男はそれが分かっていながらも尚幸せを感じることができなかった。そしてそれは男にとってなかなかのストレス源となっていた。 「…ただいまー」 「遅かったねぇ、ご飯作ったから食べなよ」 「待ってくれたんだ、ありがとう」 「いやたまたま起きてただけだから笑」 男が仕事の都合により夜遅くに帰宅しても妻はそのまま帰りを待ってくれることがよくあった。その度彼女は「たまたまだ」と口にしたが本当にたまたま起きていただけの日は口で言った回数よりも遥かに少ないことは男もよく分かっていた。こんな自分には余りにも勿体ないほど素晴らしい人を妻にしてほんとに許されるのか、と男は毎回思っていた。 「私との暮らしに幸せはもう見つかった?」 「本当に好きなのは変わってないしずっと感謝している……でもまだ幸せだと感じることが出来ない。こんなに満たされてるのにごめん…」 男は隠し事をしたくない性格により妻に自分の悩みを既に伝えていた。悩みの内容もあり最悪離婚を切り出されるのでは無いかと恐れていたが妻はそんな夫を受け入れ、無理せず見つけて言って欲しいと言ってくれた。そして今日も 「好きなのは十分伝わってるからいいって、別に私も幸せ探しのために何か無理してる訳でもないんだし」 「ありがとな…」 妻の優しさがそのまま男に突き刺さる。「大丈夫」や「無理するな」、そんな言葉に唯ならぬ愛と同時に自分の情けなさを感じる。一刻も早く幸せを見つけなければと男は彼女の、そして自分の願いを叶えるため実現の為の糸口から地道に探していく作業に男は今日もまた勤しむのであった。
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