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帰り道
新しいクラスの担任は女性だった。名前は戸部はるか という。今年から赴任してきた20代前半の教師。子供がとても好きで、一緒に色んな行事や思い出を共有することを好む、気持ちの良い女性だった。
ふつう、新学期のホームルームでは先生や生徒の自己紹介、1年間の行事や授業、ルールなどの確認をして終わるだろう。しかし戸部先生は、机を教室のはじにまとめるように指示して、椅子で教室を丸く囲むように並べさせた。そして、先生の自己紹介や質問など、おもしろおかしく話をした。生徒たちのことを知ろうとする時には、端から順番に自己紹介をさせるのではなく、ひとりずつ自然に話を引き出して、ごく自然に生徒ひとりひとりをクラスメイトに認識させていた。
その日の帰り道。そらとだいち、こころとかおりは一緒に帰路についていた。
「わたし、戸部先生好きだなぁ。なんかすぐ好きになっちゃった。」
こころがつぶやいた。
「うん、素敵な人だね。」
かおりも同調する。
「明日も、勉強じゃなくてこんな感じがいいな。」
だいちはのほほんとつぶやいた。
「ははは。」
気持ちがわかると、そらは笑った。
「そんなふうになるわけないでしょ。」
こころが呆れるように言った。
「わかってるよ。そうだ、そんなことより今日、お前んち遊びに行ってもいいだろ?久しぶりに馬見に行きたくなってさ。」
「ええ、急だよ。今日かおりと遊ぶんだもん。ね、かお。」
「うん、でも、いいよ、わたしは。」
「えー、でもうるさいよこいつら。それにわたしたちお部屋で遊ぶもん。」
「いや、おまえたちは遊んでてもいいからさ、オレとそらは馬で遊んでるから。」
そう言って、
「なぁ、そら。」
振り向くとそらが居なくなっていた。
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