こころの家から、謎の紙

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こころの家から、謎の紙

「正体がわかった?」 そらとだいちは声をそろえて言った。 「そうなの。わたしたち、こころの家の書棚を見ていたの。好きな本を読もうと思って、何気なく見ていたら、この町の歴史にまつわる本があったの。」 「それで、目次をぱらぱらと読んでいたら、ある項目に目が留まったってわけ。」 「なんの、項目だよ。」 だいちはおそるおそる聞いた。 「幻術使いを匿(かくま)った歴史があるのよ。それから幻術使いの末裔(まつえい)が多く住むようになっていたの。」 「匿うって、なんで、そんなすごい能力持った人が匿われるようなことになんのさ。」 「当時は、神様は一つだけで、神様の他にすごい人がいると邪魔だったのよ。そんな風に書いてあったわよね。」 「たぶん、そんな感じ。」 「ふうん…でもさ、それがなんで、今日の出来事と関係が…」 だいちが言い終わる前に。こころが持っていた紙を差し出した。 「その本の1ページが、読んでるうちに落っこちちゃったの。でも、そこにはこう書いてあるの。読んでみて。」 そらとだいちは、顔をくっつけるようにして文章を端から読みだした。 そこには ー術使士に依って創造されたし人ならざる者は、陽の当たる刻にはその体を透き通らせ、闇に乗じてその目を輝かせるだろう。ー の一文があった。 こころがどこか自慢げに話しだした 「ね、これって、透き通るっていうのは、目に見えないけど居るってことなのよ。さっきの出来事にぴったりだわ。」 そらは、 「ほんとうだ…。ほんとうなのか…。」 どこか、新しい発見をしたかのような目をして言った。 「じゃあ、その魔法使いが透明人間をつくりだしたってこと?そんな世界があるのかよ、この時代に。」 こころはどこか不安げに、 「でもね、それがわかっても、わたしたちはどうすればいいかわからないってわけ。余計こわくなっちゃったの、わたし。でもかおりは何か楽しそうでさ。」 「べつに楽しくなんかないよ。でもわたしたちしか知らないんだよ。現実にこんなことが起こって、わたしたちが何か世界を変えちゃうかもしれないじゃん。」 かおりは普段はおとなしくて、こころの後ろに隠れてしまうような場面が多いのだが、こういういざという時に物おじしない性格が顔を出す。今ではなにがこわいのか、さっぱりわからないといった顔つきだ。 だいちは色々と頭を巡らせて、言った。 「うーん、わかった。きっと大人に話しても信じてもらえないし、引き留められるだけさ。これはオレたちだけの秘密にしよう。なにせ今日は日が暮れちまう、かおりの家まで送ってやるよ。」 かおりはさっきまでの興奮をすぐにしまって、嬉しそうに微笑んだ。 「うん。」
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