第百四話 あの日、誓った忠誠①

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第百四話 あの日、誓った忠誠①

状況に思考が追いつかない。 そもそも目の前の男性が誰なのか、奏多には分からなかった。 「なっ……?」 レンは奏多の前で膝をつく。それはさながら騎士の示す臣従の礼のようだった。 「『破滅の創世』様、必ずや一族の者の手からお救いいたします」 レンが発した決意の言葉は、刹那の迷いすらなかった。 『破滅の創世』の神命が起点となって、この世界の運命は決まっている。 『破滅の創世』の配下達にとって、『世界の命運』は流れる水そのもの。 絶対者である『破滅の創世』のなすがままでなくてはならない。 だからこそ―― 「あたし達がするべきことは『破滅の創世』様の望むこと。この世界にもたらされるべきは粛清だよ」 そう断じた聖花の瞳に殺気が宿る。 神命の定めを受けて生を受けた『破滅の創世』の配下達にとって、『破滅の創世』は絶対者だ。 それと同時に何を引き換えにしても守り抜きたい存在だった。 だからこそ、『破滅の創世』の配下達にとって、一族の者達は不倶戴天の天敵である。神敵であると。 「あたし……? 粛清……?」 聖花が発した思わぬ言葉の数々に、観月は唖然とする。 「あたし、真似るのは得意なの。ねー、ケイ」 「その言葉づかい……。なるほどな」 聖花が口にした、その言葉の真意を理解した慧は得心する。 「相変わらず、『破滅の創世』様狙いで容赦ないな。姿が変えても本質は変わっていないみたいで嬉しいぜ、アルリット」 「ケイ……。今度は確実に消滅させるから」 そう告げる聖花――アルリットは明確なる殺意を慧に向けていた。 「……慧、どういうこと?」 観月が促したものの、慧はしばらく考えた様子を見せた。 「さて、どう説明したらいいものか」 「どうして、冬城聖花が生きているの?」 瞳に強い眼差しを宿した観月は慧を見つめる。 「目の前にいるのは、本物の冬城聖花じゃない。恐らく、アルリットさ」 「なっ……!」 何処か吹っ切れたような顔をして言う慧の顔を観月は凝視した。 「あの時、アルリットは冬城聖花の能力を強奪すると言っていたからな。まさか、冬城聖花の姿まで強奪できるとは思わなかったけどな」 聖花の能力。相手の能力をコピーすることのできるそれは、あらゆる面で絶対的な強さを発揮する。 さらに、コピーした能力を一時的に他者にも付与することができる。 もし、その能力を強奪できるとしたら――
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