第百二十五話 希望の光は花咲く④

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第百二十五話 希望の光は花咲く④

だから、言いたい言葉は決まっていた。 これが虚勢であっても構わない。今はそれでいい。内側から湧き上がる神の意思なんて、今は聞いていられない。 「俺は、結愛と――みんなと離れたくない。自分自身の手でこの幸せを手離したくない」 奏多は信じている。自分自身の力と未来を。 人は自らの足で歩いている。独りではなく、手を取り合って。 「痛くても苦しくても怖くても、この感情から逃げたくないから」 奏多は聞いていた。数多の旋律を束ね、神奏を天へと放つ。数多の人々の想い。その旋律は永久に紡がれるはずだと。 これから先、結愛達――此ノ里家の者達が『破滅の創世』の配下達に狙われるとしても。 「結愛は俺にとって大切な存在だ。絶対に守ってみせる!」 だからこそ、奏多は不撓不屈の意思を示す。 結愛を守るために身体を張って前に出た。 「俺は……これからも結愛達と一緒にいたいからさ」 「はううっ」 言葉の意味を理解した瞬間、結愛の顔は火が点いたように熱くなった。 「奏多くんが守ってくれる……」 奏多の名を口にするだけで愛おしさがこみ上げる。 同時に切望する思いが広がった。 奏多に伝えたい想いはたくさんある。これから長い時を一緒に過ごすたびに、それは増えていくのだろう。 「あの、あの、あのですね」 「結愛……?」 その時、結愛が真剣な眼差しで奏多のもとににじり寄ってくる。 そして、顔を上げて願うように言葉を重ねた。 「……奏多くん、これからも守ってくれますか? もし、神様の記憶を完全に取り戻したとしても……あの、あの、私のこと、好きでいてくれますか?」 「当たり前だろ」 奏多が発した言葉の意味を理解した瞬間、結愛の顔は火が点いたように熱くなった。 「はううっ。……もう一回、もう一回!」 妙な声を上げながら、身をよじった結愛が催促する。 「今のって、当たり前だろ、ってやつか……」 「うわああ、すごい……幸せです……。も、もう一回!」 「当たり前だろ」 「きゃーっ」 張り詰めていた場の空気が温まる。 この瞳に映る花咲く結愛の笑顔が春の温もりのように感じられて。 奏多は強張っていた表情を緩ませた。 「つーか、このやり取り、いつまでも続きそうだな」 「結愛のことだから、いつまでも続くと思うわ」 戦乱の中で、慧と観月は弟と妹が紡ぐ温かな光景を見守っていた。 奏多と結愛が抱く永久の想い。 その安らぎが、少しでも永くあることを願って。 しかし―― 「……此ノ里結愛さん、これ以上、『破滅の創世』様に関わらせるのは危険ですね」 結愛が奏多の――『破滅の創世』の導き手になっている。 その事実を前にして、レンの雰囲気が変わる。 揺れるのは憂う瞳。それは剥き出しの悲哀を帯びているようだった。
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