第百二十六話 希望の光は花咲く⑤

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第百二十六話 希望の光は花咲く⑤

「『破滅の創世』様、この世界は最も神を冒涜しておりました。故に滅ぼさなくてはならないのです。神のご意志を完遂するために」 その存在を根絶やしにすることは、『破滅の創世』を救える唯一の方法であるというように――。 そう告げるレンは明確なる殺意を結愛達に向けていた。 「それ以上、その人間と関わりを持ってはいけません。これから何をしようと一族の者の罪が消えるわけではないのです。私達が決して許さないことが、彼らの罪の証明となる」 平坦な声で、レンは誓いを宣言する。 「改めてお伝えいたします。此ノ里結愛さん。その人間は『破滅の創世』様に害を為す存在です。その人間の言葉に惑わされてはいけません」 「そんなことない! 結愛は俺にとって大切な存在だ!」 狂気の中に憐れみを交えて。 『破滅の創世』であるはずなのに、『破滅の創世』の配下達と分かり合えない。 奏多とレン達を隔てる、たった一つの最も重要で決定的な要素。 その要素は……『失った神としての記憶』だ。 それが分かっているからこそ、互いにもどかしい気持ちが入り交じっている。 「『破滅の創世』様……」 迷いなく、そして力強く放たれた奏多の言葉に、レンの瞳が細められる。 「人間として生きたことはお忘れください。神であるあなた様に人の心など、本来、不要なものなのです」 そうして、交わされる言葉。 「それは『破滅の創世』様がよく存じ上げているはず。神の力を利用しようとする人の心を毛嫌いしておられたのですから」 「俺が……」 喧騒の只中、呟かれた言葉はなぜかよく通る。 奏多は以前の自分が――『破滅の創世』が口にしたその言葉に呆然とした。 『人の心など、不要なものだ』 その時、微かに思考を過ぎる何か。 いつも奏多の心に響いていた言葉。 それはかっての自分が貫いていたはずのもの。 それは吹雪く大地のような世界の中で聞いた意思。 「仕方がありませんね。『破滅の創世』様のご意志が戻れば、人の心など、不要なものとして切り捨てることができるでしょう」 現状を把握したレンは唇を噛む。 このまま、悪戯に時間を消費しても平行線だ。 何もしなくては平行線のまま、為す術もなくこの場を立ち去るだけだろう。 ならば、機先を制した方が確かだ。 「願わくは、あの場にお連れすることで、『破滅の創世』様の神のご意志が戻ることを願っております」 『破滅の創世』の配下達は、『破滅の創世』の存在とともに在る。 死、消滅、終焉……。 形容しがたい『終わり』の気配とともに、だ。
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