第百三十一話 彼らの軌跡④

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第百三十一話 彼らの軌跡④

『境界線機関』。 自らを『囮』とすることで、『破滅の創世』の配下達と神獣の軍勢を誘導させるという戦術的な利用を用いてきたのである。 「おまえ達はどう足掻いても、奏多様をお連れすることはできない」 操られている一族の上層部の内密者達を斬り裂く軌道で振るったその重力波は極大に膨れ上がり――それは絶大な威力として示される。 周囲を巻き添えにした重力波は、操られている一族の上層部の内密者達を残らず気絶させた。 「あれは……」 「ほええ、すごいです。皆さんの総攻撃で神獣さん達が一気にぶっ飛びましたよ!」 奏多と結愛が見つめた先には、物々しい戦車部隊が神獣達を吹き飛ばしていた。 「分断か。そのような作戦など無意味だ」 そう断じたリディアの瞳に殺気が宿る。 神命の定めを受けて生を受けた『破滅の創世』の配下達にとって、『破滅の創世』は絶対者だ。 それと同時に何を引き換えにしても守り抜きたい存在だった。 だからこそ、『破滅の創世』の配下達にとって、一族の者達は不倶戴天の天敵である。神敵であると。 そして――。 「――うん、なるほどね。あたし達をうまく誘導させて、個別撃破って腹積もりみたいだね」 戦況を見据えたアルリットは自分を取り囲む戦車部隊を見る。 「下らないことをするね。『境界線機関』の人間は」 アルリットはそう言うと軽く手を振りかざした。 「ぐわっ!」 その一振りだけで、包囲陣を築き上げていた戦車部隊は破壊され、『境界線機関』の者達の命をいとも簡単に奪っていく。 「ねー、『境界線機関』のリーダーさん」 「――っ」 アルリットの目に宿った殺意から、司は敢えて視線を逸らした。 殺意の一言で説明できないほど、その感情は深く深く渦巻いていたから。 このままではまずいな……。 『境界線機関』のリーダーとして、超一線級の戦いを繰り広げてきた司だからこそ感じる座りの悪さ。 何よりいまだ未知数の『破滅の創世』の配下達の力が警鐘を鳴らした。 「あたし達を分断させようとしても無駄! 今度こそ確実に『境界線機関』を消滅させるよ!」 司を狙いに定めたアルリットは残像を残すほどの超加速で迫る。 「くっ……!」 司が瞬く間に、アルリットとの距離が一瞬で縮まった。 「これで終わりだよ!」 アルリットは司達を完全に消滅させるために膨大な力を解き放とうとする。 しかし――。
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