第百三十三話 彼らの軌跡⑥

1/1
前へ
/157ページ
次へ

第百三十三話 彼らの軌跡⑥

「レン。わたしは我が主の無念を晴らしたい。拠点にお連れすることは、わたし達の目的を遂行する足掛かりになるはずだ」 「それは私も同じ気持ちです。一刻も早く、一族の者の手から『破滅の創世』様をお救いしなくては……!」 リディアの宣誓に呼応するように、レンは一族打倒を掲げる。 『破滅の創世』の配下達の気持ちは皆同じだ。 「それにしても分かりませんね。彼らは何故、ここまで無駄な努力をするのか……。その行為がこの世界のみならず、数多の世界を危機に晒すことに繋がるというのに……」 戦局を把握していたレンは独り言ちた。 『破滅の創世』の神命が起点となって、この世界の運命は決まっている。 『破滅の創世』の配下達にとって、『世界の命運』は流れる水そのもの。 絶対者である『破滅の創世』のなすがままでなくてはならない。 だからこそ―― 「先を選べ、人の子らよ、この世界は滅びに面している。神は真実、正しい存在だ。神の行うことを疑うことは罪だ」 「くっ……!」 『忘却の王』ヒュムノスが投げかけた口上に、司達『境界線機関』の者達とこの場の戦線に加わった大軍勢は苦悶の表情を走らせる。 互いの距離の間に流れるのは一触即発の気配。 それでも司達の戦意は衰えない。 理解にもっとも程遠く。 ヒュムノスの眸は真っ直ぐに司達を捉えてから拒絶を紡いだ。 「それでも歯向かうというのなら……死せよ塵芥、この場で消し飛ばす」 ヒュムノスが招くのは無慈悲に蹂躙する雷光。 その暴虐の光は排斥の意図もろとも戦車部隊を飲み込んだ。 崇高なる神――尊き主の御座が、罪と偽りに満ちた世界であることが許されるだろうか。 そう訴えるように――。 「拠点。『破滅の創世』の配下達の活動の足場か……」 戦局を見据えていた奏多は置かれた状況を重くみる。 その時、奏多は異変に気づいた。 「慧にーさん、また、攻撃が来る!」 奏多がそう呼びかけた途端、上空から再び、無数の雷撃が飛んでくる。 ヒュムノスが招いたのは無慈悲に蹂躙する雷光。 結愛達がいる場所が、絶大な力に飲み込まれたそうになるものの――。 「みんな、大丈夫か?」 「はい、奏多くん」 結愛達の身に唐突に訪れた窮地。 しかし、それは奏多が手をかざしたことで危機を脱していた。 奏多の周囲にいる者達は全員無事だ。 「奏多、助かったぜ」 「この威力を何度も放つなんて……。本当に凄まじいわね」 慧の言葉に呼応するように、観月は眸に不安の色を堪える。 「この状況を覆すためには、さらに策を講じる必要があるな」 視線を張り巡らせた司は置かれた状況を重くみた。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加