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第百三十八話 それでも二つの意思は変わらない③
世界を染めていく、朝焼けの煌めき。
消えゆく夜霧の向こうに、次々と空対空戦闘能力に長けた戦闘機が飛来したのだ。
航空自衛隊のものだろうか。
「あれが援軍……?」
レンが見つめる先には、主砲の攻撃力が高い戦車が戦場に雪崩れ込んできた。
会敵の刹那、神獣の軍勢が迫る。
怒濤の如く迫る衝撃に、戦車部隊は大地を抉り、けれど果敢に砲弾を叩きつけた。
「思っていたよりも早いですね」
そう語りかけるレンは揺るがない意思を表情に湛えていた。
「『境界線機関』は手強いね。一族の上層部はいつも固定観念にとらわれているのにね」
「だからこそ、私達の付け入る隙があるというものです」
アルリットの的確な意見に、レンは恭しく礼をした。
「まあ、『境界線機関』が厄介だとしても、『破滅の創世』様が示した悲憤の神命。それは絶対に成し遂げなきゃならないことだから」
アルリット達はその為に動いている。
そう――目的はたった一つだけ。
遥か彼方より、『破滅の創世』の配下達の望みはそれだけだった。
だからこそ、大願とも呼べるその本懐を遂げるために一族の上層部をも利用しただけに過ぎないのだ。
「アルリットから授かった復元能力は、この場では使う機会には恵まれませんでした」
「事がうまく運んだからね。でも、問題は今の現状」
アルリットは忌まわしくも見慣れた悪意を視界に収めた。
快進撃を続けている部隊を。
「アルリットが強奪した一族の上層部の人間の能力は、必ずや今後も『破滅の創世』様をお救いするための一助となるはずです」
「他の能力も利用価値がありそうだし、いつでも付与するよ」
レンの意思に、アルリットは朗らかにそう応えた。
敵陣を穿つ猛攻。
レン達が会話しているその間も、戦車部隊は次々と神獣を撃破していく。
突然の闖入者達によって、戦場は荒れていく。
神獣の軍勢の怒濤の如く迫る衝撃に対抗するように、援軍の戦車部隊が大地を抉り、けれど果敢に砲弾を叩きつけた。
さらに、上空から次々と小型、軽量化した戦闘機がリディア達に迫る。
「理解できないな。この程度でわたし達を食い止められると思っているとは。人の行動は理解に苦しむ……くっ!」
「……っ」
だが、戦闘機の動きはリディアとヒュムノスの想像とは一線を画していた。
援軍に来た戦闘機は、単なる空対空戦闘能力に長けた軍用機ではない。
その真骨頂は対地、対空攻撃、いずれも対応できることだ。
「悪いな。たとえ、敵の実力に圧倒されてもな。俺達はこの戦いを諦める気はないぜ」
それは司が示した確かな信念だった。
悪意に晒されながらも、それでも乗り越えて進むしかない……と言うように。
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