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第百三十九話 それでも二つの意思は変わらない④
「誰の想いも、無駄にはさせねぇぜ」
「奏多様は絶対に護るわ」
慧の確固たる決意に、観月は応えた。
奏多と結愛が十分な距離さえ取れば、慧と観月が懸念する要項が減る。
あとは全力で攻撃を叩き込むのみ――けれども致命状態には気をつけながら、慧達は猛威を振るった。
「さて、ここからが踏ん張りどころだ」
司を始め、『境界線機関』の者達も相応の覚悟を持って、この足止めを行っている。
その守りは固く、そう簡単には隙は見せない。
総力戦を仕掛ければ、十分に勝機はある。
それに『破滅の創世』の配下達はまだ、援軍に対応できていない。
そこを突くように、援軍の戦車部隊が大地を抉り、果敢に砲弾を叩きつけた。
「もう引き時だね」
上空から戦場を俯瞰していたアルリットは引き際を見定める。
とはいうものの、やはり狙いは奏多なのだろう。
「ここまで慎重に事を運んで、『破滅の創世』様を拠点にお連れできないとは……」
レンは悔やむように言った。
「レン、それは分からないよ。まだ、この場に留まっていられる時間はあるから」
そう語りかけるアルリットは揺るがない意思を表情に湛えていた。
「『境界線機関』は本当に手強いね。一族の上層部はいつも固定観念にとらわれているのにね」
「だからこそ、私達の付け入る隙があるというものです」
アルリットの的確な意見に、レンは恭しく礼をした。
「まあ、『境界線機関』が厄介だとしても、『破滅の創世』様を拠点にお連れすること。それは絶対に成し遂げなきゃならないことだから」
アルリット達はその為に動いている。
そう――今の彼女達の目的はたった一つだけ。
奏多を拠点に連れていくこと。
「ただ、問題は今の現状だね」
アルリットは忌まわしくも見慣れた悪意を視界に収めた。
快進撃を続けている部隊を。
そして、『破滅の創世』の神としての権能の一つである神の加護。
その力を一族の上層部が有している今、『破滅の創世』の配下達は同じ地に長時間、留まることはできない。
神のごとき強制的な支配力。
一族の上層部が有しているその絶大な力は天災さえも支配し、利用することができる。
それは『破滅の創世』の配下達を同じ地に留めないようにすることも可能だ。
「この場にいる『破滅の創世』様の記憶を再封印した者達を全て根絶やしにしたかったのですが、仕方ありません。せめて、『破滅の創世』様だけでも拠点にお連れしなくては」
レンの胸から湧き上がってくるのは鋭く尖った憤り。
そして――。
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