第一話 兄と弟

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第一話 兄と弟

手を繋いだ夢を見た。 いつも一緒にいる弟と、二人きりで晴れた日の公園を歩く夢。 周りには誰もいない。兄弟は無人の公園を燥いで駆け巡り、そのたびにどうでもいいことで一喜一憂する。 「――ありがとうな」 ふと、兄が笑顔のまま、そう呟いた。 「一緒に居てくれてさ」 弟と紡ぐ時間の糸は、時には絡まり、時には外れて思い通りにはならない。 だが、それでも恋い焦がれる気持ちと同じように、今も彼に結びついていた。 理不尽にさらされてきた。 滑稽な現実に直面した。 それでも。その全てを経て今、兄弟はこうして笑えている。 それが他の人にとって、どれほど哀れに映っても。 兄弟はこの瞬間、確かに幸せだった。 確かに幸せだったのだ。 交わないはずの二人の関係が再び繋がった日。 あの日、間違いなく兄弟の世界は変わってしまった。 だけど、それは一族の者達が望んでしまったことだ。 「今が幸せならそれでいい……」 醜い過去から兄は目を逸らす。 二人だけの優しさに満ちた世界。 たとえそれが……仮初めの平穏だと知っていても――。 この地から見える空はいつも美しく輝いて見えた。 他の場所を知らない兄弟にとって、その空が全てだったから――。
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