燃ゆる火に己を見る

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絶えず、紙と乾燥した葉が燃えていく。 吸い込めば、より速く燃えていく。 いつからか、家の外で、座って、 たばこを吸える場所は無くなってしまった。 だからいつも同じ喫茶店で、 僕はいつも同じようにたばこを吸う。 初めは憧れだった。 カッコいいと思う社長が 金の紙箱から徐にたばこを出し ライターで火をつけて ちょっとしたら徐に灰皿で消す。 ただの憧れから 気がついたら自分の生活に なくてはならないものになっていた。 今でもその社長のことは かっこいいと思っている。 でも、彼はたばこをやめてしまった。 「子供ができたから」だそうだ。 でも僕は、 今日もたばこを吸い続けている。 彼に憧れているなら 今すぐにでもやめるべきだろうに。 ふと、思う。 なぜ僕はたばこを吸い続けているのだろう。 zippoのオイルの香りが好きだ。 昔からガソリンスタンドが好きだった。 100円ライターとは違う香り。 終わらなければならないのも好きだ。 飽き性だからどんな趣味も3日でやめてきた。 やり始めたらその簡単さに辟易する。 終わりが見えるのが好きだ。 国立大学の受験に一発で合格することができた。 期日までにやり遂げたらよい。 そうか、自分なんだと気がつく。 自分1人では無価値なのも 放っておいたら勝手に燃え尽きるのも 息巻いたら素早く燃え尽きるのも わかりやすく終わりが見えているのも。 たばこと僕は、おなじ。 だから僕は、たばこのことが好きなんだ。 現実の僕を見ずに 俯瞰して自分を見ることができるから、 僕はたばこが好きなんだ。
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