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祖父は二階のベッドの上でかすかな寝息を立てて眠っていた。
グレーの寝間着を着て口を半分だけ開けている。
「あ、来てたん?」
階段を上ってくる音が響いた後、祖母の声が聞こえた。
「ばあちゃん、玄関の鍵閉めろって言ったろ」
振り向いた時には、すでにこちらに背を向けて階段を降り始めていた。
祖父の方に向き直ると、目が少し開いていたので話しかけてみる。
「久しぶりだね。じいちゃん」
「全然変わってなくて安心したよ、二人もこの家も」
「寒くはない?何か不便があるなら、ばあちゃんに言っとくよ」
わずかな変化も見逃すまいと神経を尖らせたが、祖父の反応を読み取ることはできなかった。
再び上がってきた祖母が、ベッド脇の小さなテーブルにお茶の注がれたグラスを置く。
僕が冷たいお茶しか飲まないことは覚えていたようだ。
「今年は早いんね」
「休み取れたから。じいちゃんは元気?」
「たぶん」
二人とも祖父の顔を見ながら言葉を交わす。
祖母は祖父の話題について話す時、いつも他人事のような口ぶりになる。
それはおそらく、分類するとしたら照れに含まれるような、特別な存在に対する天邪鬼な感情なのだろう。
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