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彼と彼女のゆずれない戦い!
「本当に何もわかってないのね!」
彼女はバンッ!と机を叩いて言う。なんて乱暴な女性だ、と僕は呆れてしまった。気づいていないのだろうか。彼女の怒気が恐ろしくて、息子たちが早々に自室に避難してしまったことに。
いつでも母親であることを優先しろ、なんてことは言わない。
でも親になった以上、子供たちと無関係な怒りで、まだ幼い彼らを怯えさせるのは如何なものか。ああ、本当に呆れ返る。
しかも。
「趣味が悪い趣味悪いと思っていたけど本当だったみたい!あんなヤツが好きなんて、貴方どうかしてるわ!」
「あんなヤツ、だと?」
まったくもって聞き捨てならない。僕は眉を跳ね上げる。
僕自身を叩くならまだ仕方ない。しかし、僕の大切な存在をあんなヤツ呼ばわり。到底許せるはずもない。
「なるほど。……君は僕が思っていたよりずっと愚かだったようだ」
僕はふうう、と怒りをため息とともに吐いた。
彼女が一番愛する存在がなんであるかなどわかっている。しかし、その存在を証明するため、他人が大事にしているものを貶めるなんてあまりにも許しがたい。
「表にでろ、亮子。今日こそ決着をつけてやる」
「望むところよ!」
僕達はバチバチと、火花を散らして睨み合ったのだった。
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