秘密のおくすり

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その後、小池先生からの話を聞く事はなかった。 俺は、芥川龍之介が若い頃を振り返り反省していた数学と体育は精一杯努力しながら、自分の力を信じて、登山やスポーツで身体を鍛えつつ勉学に励んでいる。 を飲んでいた時の微かな記憶が俺の脳裏に焼きついている。 俺の芥川龍之介に関する知識の集積が、人格化して好き勝手に振る舞っていたようだ。 俺は、一人の大人として対等に大人である先生に向き合いたいと思っていたのかもしれない。 社会的地位や名声のある人間として、自由気ままに振舞ってみたかったのだろう。 今となっては、そんな俺の願望そのものに赤面する。 カタチばかり大人の真似をしてみたいなんて、まるでガキだ。 その事に気づくきっかけを作ってくれたの治験は、ある意味、貴重な体験となった。 俺は地道に心身の力を磨き、実力で勝負したいと思っている。 いつかきっと、芥川龍之介に恥じない哲学的な作家になって、超健康的芸術至上主義を打ち立ててみせるぞ。  完
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