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「君、タバコは持っているかね? できれば『敷島』がいいんだが」
僕は、目の前にいる40前後の白衣を来た男に、そう尋ねた。
「おおおお! 芥川先生ではございませんか。これはこれは失礼致しました。この施設内は禁煙となっておりますので、近くのカフェにでも参りましょう。ささ、こちらへどうぞ」
その男は、何が嬉しいのかニヤニヤしながら俺を建物の外へ連れ出し、車に乗せて、まずタバコを買って来た。
見たことのない銘柄だった。
ライターも、随分と不思議な透明な容器に入っていた。
「芥川先生。最近はタバコを吸える店が減りました。調べてみたのですが、この近くには、そうした店がございませんので、狭苦しいところですが、私の家にいらして下さい」
「それは構わないが。君は、どこの出版社の人間かね? 見かけない顔だな。僕は君と何か約束していたかね?」
「芥川先生。僕は出版社の人間ではございません。とあるおくすりの研究をしている者です」
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