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しかし、僕が何を念じて薬を飲むか、黙っていれば、この男にわかるはずはない。
男には、河童になると言って、その実、僕は若返りを願おう。
若返って、今までの人生経験を活かして、もう一度、思う存分、自分の力を発揮してみよう。
仮に、うまくいかなくても、自分の人生に変わりはない。
僕は、その男の目を見て答えた。
「よろしい。それでは、僕は河童になってみよう。さあ、そのおくすりを出したまえ。なりたい自分の姿を強く念じて、薬を飲めばよいのだな?」
「おお! さすがは芥川先生。人並み外れた大胆さ。勇気がありますなぁ。こちらが、そのおくすりでございます」
僕は薬包紙に包まれた一服の薬を手渡された。
大きめのグラスに並々と水が注がれた。
僕は、心に『若い日の自分に戻りたい』と強く念じながら、その青い粉薬を飲んだ。
途端に、目の前がチカチカして、頭の中がグルグルした。
物凄く喉の渇きを感じて、ガブガブとグラスの水を飲み干した。
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