秘密のおくすり

8/9
前へ
/9ページ
次へ
ce746a72-a678-4890-bd73-682db003af81 「おや、ここはどこですか?」 俺は、眠りから覚めたような気がした。 小池先生が、目の前で微笑みながら尋ねた。 「気分はどうだね?」 「何だか、長い旅をして来たような不思議な心持ちがします」 「さっきまでのおまえの写真を隠し撮りしておいた。見たいかね?」 小池先生はズボンのポケットからスマホを取り出して、俺に見せた。 「ほら、おまえは、こんな毛むくじゃらの芥川龍之介になっていたんだ」 856b78c3-12de-42b3-b2dc-c7175606bdf0 俺は信じなかった。 「あははは。どうせ合成写真でしょ。でも、何となく口の中がタバコ臭いな」 「信じるも信じないも、おまえの自由さ。だが、おまえは芥川龍之介に変身するとタバコを吸いまくるから、もう二度と、このを使わせることはしない。ある意味、非常に有益な治験のデータとなった。ご協力頂き、ありがとう。さあ、家まで送って行こう」 「いえ。自分で歩いて帰れます。俺、何となく、自分の力を試してみたくなりました。俺の進路ですが、とりあえず芥川龍之介を目標に、東京大学を目指します」 「あははは。凄いな。目指すのは自由だ。案外、おまえならなしで、夢を実現できるかもしれんぞ。頑張れよ」 「はい! お邪魔しました。ありがとうございました」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加