不審者な魔女

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「やめとけよ、秋津。危ないぞ」 「何が危ないの? 行ってみないとわからないじゃん!」  帰り会のあと、クラスの男子、敷島公(しきしまこう)が話しかけてきた。  もちろん不審者のことだ。 「わざわざ首をつっこむ必要ないだろ? 不審者を調べてなんの意味があるんだ? それより遊びにいこうぜ」 「あー、なるほどねー。公、こわいんだ?」 「は? 誰がこわいもんか。俺はお前のこと思って言ってやってるんだよ」  公はあたしと一緒に学級委員をつとめている。  あたしもけっこう背が高いけど、公は一回り大きく、運動神経は抜群でサッカーが得意。 「別に気をつかわれる筋合いないんだけど。ほら、歴行こ」 「えっ、私も行くの!?」  歴はびくっとする。  ただでさえ小さくコロっとした体がさらに丸くなる。 「当たり前じゃん。帽子が気になるんでしょ」 「そうだけどさ……。近寄っちゃダメって言われてるし、ほんとに変な人だったらどうするのよ」 「近くがダメなら遠くから見ればいいじゃん。それで問題ないでしょ」  歴はため息をはく。 「はあ……。言い出したら絶対やめないよね……。わかったよ。絶対に近く行っちゃダメだからね」  歴は観念したみたいだ。  一年生からの付き合いなので、あたしがどういう性格かよくわかっているんだと思う。  それがうれしいと思う反面、あきれられているのはちょっと悲しかったり。 「歴は心配しすぎ。なんかあったら倒してやればいいじゃん」 「倒すってゲームじゃないんだから……。誘拐されたらどうするの?」 「うち、ビンボーだから大丈夫!」  Vサインをしてみせる。  あたしが誘拐されても、身代金一億とか払えるわけない。そんなこと誘拐犯だってわかるはず。  たぶん歴のおうちはお金持ちだ。 「そういう問題じゃないでしょー! そんなこと言ってると、私行かないよ!?」 「はいはい、わかりましたよーだ。近づかなければいいんでしょ」 「ほんとわかってるの? もう……」  歴は不満そうな顔をするが、これ以上何か言っても結果は変わらないと思い、やめたみたい。  ランドセルを背負って教室を出ようとすると、 「おい、待てよ!」  公が先回りして道をふさいでくる。 「なに? 邪魔しないで」 「俺も行く!」 「こわいんじゃなかった?」 「誰がこわいって言った? お前らだけじゃ不安だからついていくだけだ」 「ふーん、別にいいけどー」  公はいつもこんな屁理屈を言って邪魔をしてくる。でも、止められてもやめる気はない。  ついてくるだけなら別にかまわないので、こうして三人で不審者を探すことになった。
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