退屈は植物を殺す

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 ︎︎一週間後、薬がなくなる頃にまたツタの元へ向かう。ツタの顔色は出会った時よりもよくなっていた。 「ツタ、今日の体調はどうですか」 「悪くは無いよ、相変わらず退屈ってだけで」 「今日は薬だけではなく本を持ってきました」  鞄から一冊の本を取り出す。子ども向けでとても分かりやすく今の世の中を説明した本だ。 「な、なんで……?」 「音声で聞くこともできる優れものです。ツタ、ここ以外の世界も知るべきです」  ︎︎持参した本スタンドをツタの前に持ってくる。右手だけで本を読めるようにしてやった。 「そして、知った後でもここに居たいと思うなら私はツタに薬を提供し続けましょう」  ︎︎すべては知識だ。知識なく怖がり薬を飲まないことはいけない。知識なくこの状況を受け入れることもいけない。考えられる脳があるなら尚更だ。 「……たしかに退屈はしなさそうだな」  ︎︎ツタは右手で本をめくる。ほんの少しだけ期待を込めた彼の表情に、私も微笑み返した。
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