退屈は植物を殺す

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「……ボクは人間と同じように働くことができない」 「ほかの道がありますよ」 「そしてボクの体は薬にすらならない」 「そうと決まったわけではないでしょう。万病に効かずとも……」  ︎︎そう言いかけた時にふと頭痛が消えていることに気づく。昔から慢性的に起こっていたのに最初は気がつかなかった。そういえばツタの葉を食べてから、腰痛、口内炎も治っていた。あんな一口だけで、ここまでの効力があるとは。  ︎︎もしかしたら薬として本当に使えるかもしれないと口にしようとした時にツタの言葉をふと思い出す。 「母さんが万病の薬だって教えてくれた」  ︎︎少し違和感があった。人間が自分の子どもに向かってお前の身体は薬になるだなんて告げるだろうか。まさか。まさか……  ︎︎万病の薬を作るために植物族と子どもを設けた……? 「試して悪かったよ。ここに長らくいると頭がおかしくなりそうなんだ」  ︎︎ツタは私の様子に気がつかずにつづける。混血だから、動植物だからといっていくらなんでも優遇されすぎていると感じていた。  ︎︎……閉じ込められている? 「……ここにいることは嫌いですか」 「どうだろうね。話し相手はいないけど、ここにいる植物達はいいやつらだよ。案内人も忙しいのか食事以外じゃほとんど来ないし」  ︎︎一人でいることが好きなのではなく、誰かといて傷つけられないことが好きなんじゃないだろうか。 「話し相手がいないと退屈でしょう」 「……君みたいなのがいれば少しは気が紛れるのかな」 「私でよければいつでも来ますよ」  ︎︎ツタの目に光が宿る。 「症状がよくなるまで薬は飲んでもらいますけどね」  ︎︎そして私の言葉に苦笑いした。 「わ、分かったよ……約束、だもんね」 「今日は軽く不安感を抑えてくれる薬を渡しておきます。やたら眠気がしたり記憶が飛ぶようならすぐに言ってください」  ︎︎薬剤師ではなく薬師になったおかげで自分で処方をすることができる。私は薬を取り出し袋につめた。 「これは食事の後に飲んで下さい。案内人に渡しておきますから。お大事に」
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