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 麻衣ちゃんと坂間くんは、家は離れているけれど、同じ保育園に通っていたそうだ。 3月生まれで体も小さかった麻衣ちゃんを、いつも助けてくれたヒーローなんだって。坂間くんは4月生まれだから、ほとんど1歳違う。 なんでも出来て、同じ年でもお兄さんみたいだったと麻衣ちゃんは言っていた。  武良君は眼鏡をかけていて、電車にくわしい。おたくっぽいという人もいるけど、麻衣ちゃんに言わせると研究家肌なところも素敵らしい。  麻衣ちゃんがポニーテールみたいな背が高く見える髪型をしないのも、厚底スニーカーをはかないのも、武良君が麻衣ちゃんよりも、ほんの少し背が低いせいだと思う。  麻衣ちゃんは、武良君の身長が自分よりも低いことなんかどうでもいいみたいだけど、武良君は気にするかもしれないって心配しているんだ。  ガラッと教室のドアが開いた。 「あーッ」  わたしは入ってきた先生を指さした。 「担任、また高橋先生かあ……」 「おーい。聞こえてますよ、水瀬さん。そういうことは小さい声で言うものです」  高橋先生が白髪まじりの頭をかしげて、あきれ顔で言う。 「だって、小さい声で言ったら、すごく本音みたいだし」
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