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校長先生は武良くんの名前こそ出さなかったものの、「わが校の誇りです」と絶賛したものだから、犯人探しならぬ英雄探しが始まるのは自然だったし、武良くんの名前がみんなに知れ渡るのはあっという間だった。
他のクラスの女の子達が、休み時間に武良くんを見にやってきたりもした。
転校生の伊奈利を見に来る子たちもいたから、6年1組はちょっとした話題のクラスになっていた。
「はあー、うっせーなー」
キムヤントリオは面白くなさそうだった。それはそうかもしれない。自分たちの方が先に現場に到着していたのに、何も出来なかったのだ。
武良くんが注目され、賞賛されればされるほど、自分たちが役立たずだと言われているような気持ちになるんだろう。
その気持ちは分かるし、ちょっと同情する気持ちもある。もしも私が近くにいたとしても、緊急停止ボタンを押せたかというと自信がない。
緊急停止ボタンはふみきりの遮断機に目立つように設置されているけれど、事故目前の緊急事態の場面で見つけられるかどうかさえあやしいと思う。
武良くんは注目されるのは好きじゃないから、騒がれても不機嫌な顔をするだけだった。
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