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 麻衣ちゃんは最初は(さすがわたしの武良くん!)という感じで、嬉しそうだったんだけどお昼休みにはゲッソリやつれた顔になっていた。 「色葉ちゃん~」 「どうしたの、麻衣ちゃん。そんな泣きそうな顔して。武良くん、英雄じゃない。みんなに注目されてるよー」 「そこなの、そこ!」 「そこ?」 「だって、見てよアレ」  麻衣ちゃんが目で武良くんの方を指す。武良くんの席の周りを数人の女子が取り囲んでいた。しかもクラスでも目立つ華やかなグループだ。耳をすますと……。 「武良くん、電車止めるの、怖くなかった?」 「べつに」 「緊急停止ボタンのこと、元々知ってたの?」 「常識だろ」 「電車、どの位の近さで止まったの?」 「忘れた」 「赤ちゃん泣いてた?」 「泣いてた」  という、武良くんのまったく愛想のよくないやり取りが聞こえてきた。 「うーん、まったく分からない。アレの何が心配なの? あっ、武良くんが冷たいとか無愛想って悪い評判が立っちゃいそうだから?」 「ちがうよー」  麻衣ちゃんはぷうっとふくれた。
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