82人が本棚に入れています
本棚に追加
/112ページ
かんたんに「そうなんだ」とコックリさんを否定するようなことは言ってはいけないと思った。
「そ、そ、そーんなことないと思うよ。麻衣ちゃんとわたしのコックリさんは、特別っていうか? 信用できると思う!」
うんっと強く言うと、伊奈利の髪が、プルンッと三角に盛り上がって震えた。
「んっ?」
耳だーーーーーーーーーーーーーー!
パシパシとまばたきして、よく見ようとしたけれど、麻衣ちゃんがずいっとわたしの目の前に乗り出してきて、視界をふさいだ。テレビならズームアップだ。伊奈利の耳をしっかり見たいのに、麻衣ちゃんしか見えない!
「色葉ちゃん! やっぱりそうだよね。わたしもそう思ったんだけど、自分だけじゃなんだか自信がなくなって来ちゃって。色葉ちゃんもそう思ってたなら、間違いないよねっ!」
「う、うんっ」
麻衣ちゃんとわたしはお互いの手をギュウッと握りあった。
午前最後の授業の算数が始まって、わたしがやっと伊奈利の頭を見直したときには、三角の耳はもうなくなっていて、ごく普通の男の子みたいに、前の席の男子からプリントを受け取っていた。
最初のコメントを投稿しよう!