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だけど笑ったその横顔に、なんだか見覚えがある気がする。転校してくるずーっと昔から知っているような。
うーん、誰だったかなァ……?
伊奈利をこっそり盗み見ていると、伊奈利が視線に気が付いてわたしを見た。
ニイッと笑うと、くちびるが横に広がっていく。伊奈利は片手をグーにして、顔の横でクイッと曲げ、「コンッ」とひと声鳴いた。
「あっ、お稲荷様っ?!」
わたしは思わず立ち上がって、叫んだ。クラスのみんなが振り返ってしまった。伊奈利はというと、原因を作った張本人なのに、すましている。
「おー、水瀬色葉さん、やる気まんまんですねー。せっかく立ってくれたので、次の問題をお願いしまーす」
高橋先生ののんきな声に、みんながどっと笑った。
「はい……」
わたしは仕方なく黒板に向かった。なんとか回答を書きおえて席にもどると、わたしは隣の席の伊奈利にそっと言った。
「お稲荷様、なんでこんなところにいるんですか?」
「オレ、お稲荷さまじゃないよ。鳥居のところに居るキツネ。だけどただのキツネじゃないぜ。神さまの眷族、お使いなんだ」
「へええー」
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